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あのねノート

せんせいあのね、パソコンで字が書けるようになったよ

「妊娠カレンダー」を読みました

前に読んだことがあるので再読なのですが、小川洋子さんの「妊娠カレンダー」を読みました。

理由はよくわからないのですが、気分が沈むときやかなしいことがあってどうしようもなくつらいときは小川洋子さんや江國香織さんの本を読みたくなります。たぶん、なんとなく悲しい雰囲気が流れていて、自分の気持ちに寄り添われているような静かな気持ちになっているのではないかと思います。

さて、この「妊娠カレンダー」には「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」の三篇が収められています。「妊娠カレンダー」は芥川賞受賞作なのだそうです。

わたしの持っている文春文庫版の内容紹介は次のようになっています。

出産を控えた姉に毒薬の染まったジャムを食べさせる妹…。妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを描く芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」。謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ドミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三篇の小説。

この「透きとおった悪夢のようにあざやか」というのがこの本の魅力だと思います。この本に収められた三篇は、いずれもファンタジーな世界ではなく、日常生活を舞台にしています。登場人物たちの行動も特段変わったことはなく、ただただ日常的なことです。ただ、主人公の内面や登場人物の言動が少し不気味に変化していくのがこの本に収められた小説に共通しているところではないかと思います。主人公の目を通して語られたり登場人物の口から語られる日常生活の描写が、妙に写実的で生々しくて不気味なのです。生々しいからこそ読んでいる側は場面をはっきり思い浮かべることができるのですが、生々しすぎて逆に不自然な気持ちになります。日常生活の風景なのに、自分が生きている世界とは何だか違っているような感じで、読んだ後なんだかぞくぞくします。これが「悪夢のようにあざやか」ということではないかと思います。

この本を読むと、自分のことも別の遠いところから見つめているような気持ちになります。それで気持ちが落ち着くので、わたしは気持ちがざわざわして仕方ないときたいていこの本を読みます。

梅雨のじめじめした時期に、お部屋で静かに読書というのによく合う本だと思います。そんなに長くなくて、意外と気軽に読めるのでおすすめです。

妊娠カレンダー (文春文庫)

妊娠カレンダー (文春文庫)

 

 文庫本でありかつ薄いからか、すごく安いです。ぜひお手に取ってみてください。